** たまご の おはなし **


** 天からの贈り物・たまご **

生命の源・たまご。
流れるような線とふくよかな美しい形状は、将に、自然が生んだ最高のもの。
スピリチュアルフードの一つでもある卵には、無限のヒーリングパワーがあります。

古代エジプトでは草の汁で染めた卵を食べ、コズミックパワーを秘めた卵の力を、
不老不死・永遠の生を得る為に、取り入れていました。
栄養事情の悪かった昔、栄養価の高い卵は、将に、天からの贈り物・・・と、当時の人々にとっては、
宝物のように感じたに違いありません。

小さな殻の中に詰まった生命の不思議と誕生の喜び、その神秘性と人智を超えた大きな力が宿る卵に、古代から人々は敬虔の念を持ち、聖なる卵として絵や装飾を施し、魔よけや信仰のシンボル、宗教的儀式などで、天からの恵みへの感謝と信仰の誓いとして、神に捧げてきたのがエッグアートの始まりです。   日本でもすっかりお馴染みになった イースターエッグの起源 もここにあります。


** Easter・イースター **

イエス・キリストは、13日の金曜日に十字架に架けられ、
                      三日目の日曜日の朝 再び、蘇られた。


基督教ではイエス・キリストが蘇った日、日曜日を「主の日」
とし、仕事を休んで礼拝に集まるようになりました。
ここ日本でも、日曜日は学校や会社がお休みですが、
日曜日が休みになったのも、実は、イースターにあります。

キリストの復活を祝うお祭り Easter イースター。
Easter Day は、春分後の最初の満月の次の日曜日。
基督教における最も重要な祝い日です。

イエス・キリストの苦しみを偲び、祈りを捧げ断食を行い、聖火を灯して賛美歌を歌い、イースターリリーを飾って、復活祭で成聖された卵を食べたり、皆で贈りあったりして、受難 と 死 と 復活 という、
主の過ぎ越しの再現 と 復活のお祝い をします。
イースターは、キリストの復活を祝うと同時に、死から生へ 罪から赦しへ といった真理への道を、
時間と空間を越え光の存在となったイエスによって、与えられていることへの祝いでもありました。

Easter イースターとは、春の女神・夜明けの女神 という意味でもあります。
East、Eastern など “ 東 ” を意味する言葉は、太陽が東から昇ることから、豊かな恵みと春を象徴する
チュートン族 ( ゲルマン民族 ) の神話の 春の女神 エオストレ ・ Eostre の名前に由来し、
イースター ・ Easter の語源もここから来ています。

昔から、ケルトに春が訪れ、夜と昼の長さが同じになる春分の日に、エオストレの祝祭が行われ、
これが後々、イエス・キリストの復活祭に繋がっていったということです。
生命の蘇り、新生、希望、幸福や繁栄を象徴するEaster・復活祭は、長い冬に終わりを告げ、断食や祈りなどの生活の束縛から解放された後に来る、将に、春の女神・幸運の訪れを意味するものでした。


** Easter Egg    &  Easter Bunny **
    イースターエッグ と イースターバニー

イースターといえば、Easter Egg ・ イースターエッグ。
Easter Egg は、新しい生命の象徴。

復活祭の典礼中は 染め卵が成聖され、人々の間で 卵を贈り合う習慣がありました。
卵は、太陽や生命の象徴であり、キリストの血を意味する赤や明るい色に染められることが多かったようですが、後に、色彩色豊かに色美しく彩ったものや、帝政ロシアのカール・ファベルジェが作ったインペリアルエッグのような、芸術性の高い宝飾美術品へと発展しました。

イースターの前の晩、良い子のところに卵を置いていくのは ウサギさん?
まばたきをしないウサギの目が、春分の頃のお月さまのようだからでしょうか、昔から、
野ウサギは卵を運ぶ使者であり、新生や循環、春の息吹、多産などの象徴として、大変な縁起物。

ある暖かな春の日、うさぎたちは、待ちに待った春の訪れを運んでくれたゲルマン民族の春の女神、
エオストレに、お礼と喜びを伝えたくて、春色に染めたカラフルな卵をプレゼントしました。
エオストレはとても喜んで、バスケットに春色の美しい卵を一杯詰め、春風と共に配ったとか・・・。
春・Spring になると、なんだかウキウキして spring したくなるのは、エオストレの素敵な魔法のせい?

ウキウキしたいとき、新しいことを始めるとき、新しい恋をしたいとき、新しい展開を期待するときなどは
恵みや実り、豊かさ、やさしさや育む力を持ったエオストレにそっとお願いしてみましょう。
きっと、やわらかな春の風としあわせを運んできてくれますよ。

Easter Sunday ~ 子供達は手にバスケットを持って、庭の芝生や草の中、家の中に隠された
色とりどりのイースターエッグを探しに出かけます。
本物の卵もあれば卵やウサギの形をしたチョコレートもあり、エッグハンター達は大忙し。

エッグハンティングの由来は、イースターの前は野鳥の卵を採ることが禁止されていた為、イースターが過ぎるやいなや、皆がこぞって野山に出かけ、野鳥の卵を探した、という風習が後世に残ったもの、と言われています。

やわらかな春の日差しの中、子供たちは、卵を割らないように転がして順位を競うエッグロールや
卵をスプーンや帽子の上に乗せて落とさないように競走するエッグレースなどで遊び、バスケットの
中に、イースターエッグとたくさんの夢や希望・愛と平和を、いっぱい、いっぱい詰め込んでいきます。

雌鳥は卵をたくさん産み、雄鶏は正確に朝の時を高々と告げる “ 神の使い。 ”
粗悪な栄養事情の中、栄養価の高い滋養食・卵は、将に、庶民にとって手軽に栄養補給のできる
掛け替えのない “ 宝物 ” であったに違いありません。

春の訪れとキリストの復活、蘇りと新生、新たな始まりと、卵が孵る(かえる)ことに当時の人々は
夢や希望、幸せを託して、愛する人へと贈り合いました。
生活は決して豊かであったとは思えない当時の人々ですが、その心は、ゆでたまごのように、
温かで愛に満ち、そして、プルルン とつや つやに輝いていたのです。

** ウクライナ・ピサンキー・エッグ **

庶民の間の贈りものとしての代表的なエッグ工芸として、ウクライナエッグがあります。
ウクライナエッグの歴史は古く紀元前2500年もの昔からあったと言われ、この地方でも、
卵は古代から、宗教的儀式には欠かせないものでした。
卵の黄みは生命の源である太陽を、そして卵の白身は月を表すとし、当時の栄養事情の
粗悪な環境にあって、卵は最も身近にあった、貴重な栄養源であったことが伺えます。

卵のろうけつ染め判とも言える Pysanky ピサンキー には、書くと言う意味があり、
専用のペンと染料を使って描かれる模様は表意文字で、それぞれに意味があります。
花は愛や慈悲を、動物は生命力、健康への祈り、子孫繁栄などを表し、キリスト教がウクライナ地方に伝えられた後では、幾何学模様の中の点は聖母マリアの涙、三角形は父と子と聖霊、を表すなど、
幸運を招くものとしてイースターエッグとしても用いられ、ヨーロッパやアメリカにも広まりました。

信仰心や愛と希望、繁栄や夢、安らぎといった願いを託し、母から娘へ、娘から孫へ、時代と共に新しい絵柄や模様を加えながら、愛する人から愛する人へと、代々伝え継がれてきたウクライナエッグ。
それは、卵に込められた 純粋な “ 愛 ” そのものなのです。

** 芸術としてのエッグアート **

古代エジプト、クレオパトラもこよなく愛した エッグアート。
エッグアートの最高峰として、ピーター・カール・ファベルジェ
(Peter Carl Faberge, 1846-1920)によるインペリアル・エッグス
The Faberge Experience を忘れることはできません。

19世紀、ロシア帝国最後の皇帝二コライ2世が、皇后や母への贈り物として、イースターエッグの製作を時の宝飾師ファベルジュに依頼しました。これらの卵は、インペリアル・イースター・エッグ、ロマノフ王朝の秘宝と呼ばれ、1885年~1916年の間に、56個が作られたといわれています。
この時に製作したイースターエッグが大変素晴らしいものであったため、ファベルジュは宮廷御用達宝飾師の称号を与えられ、以降、注文が殺到するようになります。
当時の人々にとって、いかにイースターが大変な意味を持った祭日であったかが、伺えます。

ファベルジュは、卵の殻や卵形をした木や金属、ガラス、磁器等に金、銀、プラチナ、煌びやかな宝石、エナメル等を装飾し、豪華なものから実用的なものまで、多岐に渡って多数を製作しました。
ファベルジュの仕事ぶりと品質のチェックは大変厳しく、その作品は非常に完成度の高い芸術作品だったことから、現在でも精巧、且つ優雅な宝飾品の代名詞となっているほどです。

当時の王侯貴族が集うサロンでは、豪華なエッグアートを披露しあうのが大流行しましたが、度重なる革命により、徐々に衰退していきます。
1953年、英国女王の載冠式の時に公開された秘蔵コレクションの中のファベルジュの作品が、再び脚光を浴び、現代に蘇りました。